持続可能な福祉社会

持続可能な福祉社会―「もうひとつの日本」の構想 (ちくま新書)

持続可能な福祉社会―「もうひとつの日本」の構想 (ちくま新書)

404 Blog Not Foundさんで紹介され、興味をいだいたので購入。
現在の自民党が構想する「民間でできることは民間で」という「小さい政府」と対となる、もう一つの未来の姿を明示した本。筆者はそれを「持続可能な福祉社会」というコンセプトとして論じている。


注目すべきは前半である。今までの社会保障制度についての考察がおもしろい。
戦後は公共事業が雇用の受け皿となっていた。高度経済成長期はそれで良かったが、経済成長が限りあるものだと分かってきた現在では、他の方法を考えなければならない。
社会保障制度とは高齢者のためのものだと思っていたら大間違いで、若年層への社会保障というのは近年欧州から始まり日本へも議論が広まっている。所得格差が広まっているのだから、手遅れになる前に政府が制度として介入するべきなのではないかというのは納得がいくし、基礎年金を手厚くして最低限の生活を守るべきというのも分からんでもない。社会保障を手厚くしろ!でも課税は少なくしろ!というのが成り立たないのも当然の話である。
ただ、後半に筆者が論じているコミュニティ論は、諸手を挙げて賛成というわけにはいかない。なんだか論述内容がやたらと曖昧。なんかなぁ。昔は良かったというように聞こえるんだけど。


筆者との同意見としては、アメリカ追従はそろそろ止めにして、欧州型を少しは取り入れるべきなんじゃないかということ。環境税もどんどん取り入れましょう。増税もするべきでしょう。
ただ、医療費負担などは増やすのではなく、減らす方向にしていただきたい。年金も基礎年金の給付額を上げて一元化してしまって、あとは企業年金などで所得によって積み立てていけば良い。


ちなみに国民年金(基礎年金)だけ加入の場合の給付額は、夫婦で約13万。厚生年金は約23万(所得によるのでモデルケース)。
20年で2400万の差が出る。これだけ格差があると高齢者は厳しいよ。
http://www.yomiuri.co.jp/iryou/feature/20051026ik0a.htm


文章も丁寧で分かりやすいし、興味のある方は読むと面白いと思います。