アイルランド幻想

アイルランド幻想 (光文社文庫)

アイルランド幻想 (光文社文庫)

サイコドクターぶらり旅 - ピーター・トレメイン『アイルランド幻想』(光文社文庫)
サイコドクター、風野さんの書評を読み、購入。


内容は、ケルト人の風習や言い伝えから着想を得た怪奇小説。といっても、恐怖に怯えるというよりは、悲惨さに震えると言うのが正確だと思います。
筆者がケルト学者ということで、何も知らない私でも当時のアイルランドがどんなに悲惨な状況だったのかを理解できました。それは今でも恨みが残るよ。・・・まぁ、この本はそんなことを訴えようとしているのではないでしょうけど。


海外の怪奇物って、カラっとしてて直接的で怖くないと思っていました。ほら、猿が人間を襲ったり、人間が火を出したり。
・・・すみません。大間違いでした。
この本の全編にわたって漂っているのは、じめっと湿度の高い、まるで数百年も開けられたことのない地下室のような濃厚な臭気。読後でも体にまとわりついています。思ったよりも内容に入り込んでしまいました。荒れ果てた海岸線や、岩山が目に浮かぶよう。
すごく良い。手元に取っておきたい本だ。