「深い河」遠藤周作

深い河 (講談社文庫)

深い河 (講談社文庫)


まぁ、あれです。
遠藤周作という人は小説を書く上で「神とはなんぞや」つうのがテーマなのです。
本書もご多分に漏れず。


本人はキリスト教を信仰しているそうなのですが、それにしてはちょっと斜めから神の存在を見ようとしているなぁと。


代表作の「沈黙」では神は存在するのかということを読者に問いかけ、今作ではキリスト教にとらわれず神というものはこうなんじゃないの?つうのを提示してます。


実はこの本って大分好きなのですが、何故かと言われたら「大津」に憧れるのです。


物語はインドへ向かう人々の視点を通じて描かれていきます。
妻を亡くした男、戦争の傷を抱えた老人、人を愛せずに孤独を感じている女。


彼らがそれぞれの事情でインドを目指します。
その旅の終着点で出会うのが仏像であり、ガンジスであり、神の存在な訳です。


大津というのは何人も出てくるキャラクターの一人であり、元キリスト教の神学生です。
学生時代に一度だけ神に背いた彼はその傷を抱えています。また、保守的な教会に疑問を提示して破門されてしまいます。


彼の感じた疑問というのは「神は何人(なんぴと)たりとも愛するはずなのに、何故善悪の区別をするのか。」
・・・確かそんな感じw


まぁ、小説としてはちょっとどうなの?って思う部分もあるし、出来過ぎじゃん?とも思う部分もあるし、お涙ちょうだい風なとこも否めませんが。


ただインドに行った事のある私個人としては情景を重ねてしまうので、大津が最後にとった行動に憧憬するのです。
まさにインドを旅した、あの時の己の葛藤そのものなのですよ。